第69章 桜と記憶と再会
杏「このマンションと部屋のカードキーだ。君の分をずっと用意してあったのだがやっと渡せたな。」
「わ……ありがとうございます…!」
杏「エレベーターもそれを翳せばこの階まで運んでくれる。だが部屋番号は覚えておいてくれ。君は此処が何階かも何号室かも分かっていないだろう?」
杏寿郎がそうからかうように言うと桜は拗ねたりせず、ただ赤くなって俯いた。
「何階の何号室ですか……?」
杏「15階の5室目で1505号室だ。俺の誕生日が5月10日なのでな、似たような数字の部屋を選んだ。」
それを聞いて桜はパッと顔色を明るくさせる。
「覚えやすい!それにお誕生日来月なんですね!お祝いしなきゃ…!!」
杏「本当に表情がよく変わる。見ていて飽きないな。」
杏寿郎は桜の頭を優しく撫でるとソファに座り、再び桜を自身の膝の上に座らせた。
「わっ」
杏「桜は本当に軽いな。しっかり食べているのか。これではどんな非力な男にも攫われてしまうぞ。」
「……攫われそうになった事なんてな、」
杏「初めてのデートで実家へ行った時 君の口から男達に襲われたと聞いた。」
杏寿郎の声が急に低くなる。