第69章 桜と記憶と再会
杏「……俺達は君が間もなくこちらの時代に戻ってしまう事を知っていてな。『俺が君を失った後もきちんと生き、そして耐えられるように思い出を作ってくれ。』と頼んだんだ。そしたら……これだ。似合いの夫婦だろう。」
指差した先には一ノ瀬家にもあった2人が仲睦まじく寄り添って笑っている写真があった。
「…………はい。」
桜が目を見開きながら改めてアルバムを見るとそれは相当大事に扱われていたらしく、100年前の物とは思えなかった。
それでも杏寿郎は繰り返し何度も何度も見たのだろうと桜はどこかで確信していた。
「…………私がこちらに戻ってからは…どうしていたんですか……?」
杏「俺は元々君が来なければ鬼に殺されていたんだ。叶うはずの無かった父上や千寿郎との時間を大切に過ごした。父上は君が現れた時はまだ母上を喪ったショックから立ち直れていなくてな。それを君が―――…、」
それから杏寿郎は桜に今まで伏せてきた大正時代についてを語り始めた。
その時代の家族の事、一ノ瀬家の書物にもあった鬼と戦っていたこと、桜がそれに協力したこと、ユキのこと、桜の祖先のこと、鬼殺隊の仲間達の事……、
杏「驚いただろうか。」
「………………いえ。ただ、なるほど…と。」
ファンタジーな内容を ただ『そうだったんだ。』とすんなり飲み込めた事に桜自身が驚いていた。