第69章 桜と記憶と再会
杏「…………そうだ。君は突然 大正時代の俺の家の庭に現れた。あの振り袖を着たまま。……川に落ちた直後だ。」
川に落ちてから急に変わった体質、前世と言われた筈の2人を写す最新機器のスマートフォン、それに映る現代で買った振り袖、酒の好みを把握されるという計算の合わない年月……、複数あった矛盾が解決されると桜はスッキリすると共に呆けてしまった。
「タイム…スリップ……?」
ふわふわした声でそう呟く桜を撫でながら杏寿郎はおかしそうに笑う。
杏「ここまで証拠が揃っていても頭は追いつかないか。」
「…いえ…えっと………スッキリはしてます……。」
『そうか。』と再び笑いながら杏寿郎はアルバムを手に取った。
古い台紙を捲ると白黒の写真が目に入る。
「あ……、私の家で見つけた写真と同じ写真館…ううん、同じ日でしょうか?服が同じです。……それにしても私ばかりですね。」
杏「うむ!君が同じ事を言ったので後半は2人で撮ったぞ。」
そう言って捲っていくと撮影場所に杏寿郎が入ってくる。
「なんだか……、すごく私がからかわれている様な雰囲気が出ているのですが……、」
杏「ああ、腰を抱いて頬に手を添えたら君は恥ずかしがってしまってな。君は赤い頬を膨らませて…俺はそれが愛らしく堪らなく……指摘したらこのように君はきょとんとしてしまった。だが…、」
そう言ってページを捲っていく。