第68章 ※手解き
杏(…俺の性欲も昔と比べたらただの "強い方" というだけで留まりそうだ。あれは異常だった。日々命の危険を感じていたから生存本能を刺激されていたのだろうか。桜も過去にタイムスリップするという異常事態に陥っていた。体が本能的に子を望んで色香…、フェロモンを出してしまっていたのだろう。)
杏「何にせよ幸せだ。」
「……?…………はい。私もです。」
コンドームの処理をした後、2人はまだ裸のままで抱き合って余韻を味わっていた。
杏寿郎は胸の中にいる桜の顔を愛おしそうに見つめて何度も優しく褒めるように頭を撫でる。
杏「初恋は叶わなかったが今世でも君を初めて愛した男になれたな。」
「あ……でも、母に言われたんです。こっちが…、『杏寿郎さんが初恋なんじゃない?』って。私の……恋する顔を初めて見たって。」
杏「…………………………。」
杏寿郎は目を見開いて固まった後 桜が『立道くんにはドキドキしなかった』と言っていた事を思い出した。
杏「……そうだと思おう。俺の初恋も君なんだ。」
「え!?でも…周りの女性が放っておかないでしょう……?」
杏「君の事を思い出す前でも俺は他の女性に興味を持てなくてな。宇髄という美術教師がいるだろう。彼とは中学から同級生だったのだが、俺が彼を慕っているのではないかという噂が出回った程だった。」
「えっ」
桜は驚いた声を上げた後にくすくすと笑いだした。