第13章 お館様
「どうしましたか!!」
駆けつけると杏寿郎は手に紙を持って真剣な顔をしている。
杏「桜。お館様のところへ行くぞ!今日!準備が出来次第すぐ出発だ!!」
「…っ!は、はい!!!」
(え…今から…!?…きゅ、急すぎる…!!)
駆け寄ってきた千寿郎も驚いた顔をしている。
千「だ、大丈夫ですよ!お館様はお優しいと聞いています!」
桜は露骨に動揺しながらも千寿郎にお礼を言い、緊張と不安から無意識にお守りを探そうとしてハッとした。
「杏寿郎さん!丸い白い石を見ませんでしたかっ?」
隊服に着替えに行こうとしていた杏寿郎は立ち止まり、少しの間腕を組んだまま黙っていたが、
杏「む!ああ、あれか!!心当たりがある!返しそこねていたな、すまない!すぐ持ってくる!!」
そう言って自室へ向かった。
(どうしてその部屋にあるのかは置いといて、見つかってよかった…。)
そして戻ってきた杏寿郎に石は持っててもらい、早々に出発することになった。
(それにしても、この大きな猫の姿で外出て大丈夫なのかな…?)
とそわそわとしていると…、
――ヒョイッ
杏「では!!行ってくる!!!」
(あ…担がれるんだ……)
「せ、千寿郎くん、行ってきます…!!」
心配そうにしながらも微笑む千寿郎に向かって前脚を上げると、惜しむ間もなく杏寿郎は超人速度で走り出した。