第66章 拗れる
「あ、でも手土産を…お芋のスイーツとか買い、」
杏「必要ない。」
酷く低い声に眉尻を下げる桜を抱えたまま 杏寿郎は本当にすぐ近くにある自身のマンションへと向かった。
―――バタンッ
杏寿郎は家のドアを閉めると桜の靴を脱がし廊下にそっと下ろす。
そしてすぐに抱き締めた。
桜はそれでも拒絶しない。
杏「俺は君に何もしないと宣言していないぞ。」
「…………そうですね……。」
桜は以前のキスを思い出して少し目を伏せ、杏寿郎は襲われると分かった上で来たのだと思い頭に血を上らせた。
そんな杏寿郎の背中に 付き合っていなくともキスをしてしまう杏寿郎を受け入れようとした桜がおずおずと小さな手を回す。
杏「………………………………。」
背に回された手の温もりを感じて何かがブツッと切れると 杏寿郎は体を離して待つように自身を見上げている桜にキスをした。
いざそうされると桜は少し眉尻を下げる。
(やっぱり…お付き合いしていなくてもまだこういう事するんだ…。それでも、1番になれれば……、)
そう思うと桜は辛く思いつつも受け入れた。