第66章 拗れる
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優「一ノ瀬さん、着いたよ。」
真面目な優介は送り狼にならずきちんと帰ろうと思っていた。
しかしあまりにも涙が止まらないので拭ってやろうと手を伸ばした。
「…………………杏寿郎さん……。」
こんなに酔って泣いている時にまで杏寿郎の名を呼ばれると 優介は桜の気持ちが強すぎて付け入る隙がない事を再び痛感してしまった。
ぎゅっと握り拳を作ると桜の涙に触れずに腕を引っ込める。
優「……一ノ瀬さん、俺は…あなたを諦めるよ。………今までありがとう。」
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杏「一ノ瀬先生、おはようございます!!」
「……お、おはようございます…!」
杏寿郎は昨夜の衝撃から逆に吹っ切れていた。
杏(男を知ったからなんだ。俺を知れば…きっと桜は今以上に満足出来る。間に合わなかった訳では無い。これからは積極的に…、)
一方、会話をするようになった2人を見て天元は漸く安堵の息を吐いた。
天(くっついたらまじで高いもん奢ってもらわなきゃ割に合わねぇ。)