第65章 流れる月日と二度目の再会
――――――
それからお互いどうも出来ないまま桜は転校した方の高校へ教育実習に行き、一足早く卒業した早苗とのルームシェアが解消されるとバイト先と駒校が近い部屋に引っ越し、そして無事に卒業して教員免許を取った。
バイト帰りはよく優介が送ってくれており、2人はとても仲の良い友達になっていた。
杏寿郎と過ごしたのは数日で、それも2年経てば夢だったのではないかと思う事もあった。
しかし桜は杏寿郎を忘れられず、寂しい時は大きな手のひらで撫でられた時を思い出しながら自身の頭を撫でたり、焼き芋を見ては杏寿郎の元気な声を思い出して心を痛めていた。
それでも指輪の安心感でなんとか卒業できたのだ。
そして、駒校の方から『働いてくれないか』という誘いが来た。
(こんなお誘いが来て…知ってる学校で働けるなんて信じられない幸運だよね…。でも、杏寿郎さんもまだ働いてるのかな……。)
そう思いつつ、話が来た時点で気持ちは決まっていた。
(絶対に会いたくないのに、会ったら後悔するのに……狂おしいほどに会いたい。)
矛盾する気持ちを持ちながら桜の勤務先が決まった。
――――――
4月のはじめ、新しい季節の中―――、
桜は何人かの新任の教師と共に校長である白髪の美女、産屋敷あまねの後について歩き、職員室へ向かっていた。