第65章 流れる月日と二度目の再会
一方その学園祭のシーズンでも杏寿郎の調子は狂っていた。
桜は大正でも現代でも杏寿郎に一目で惹かれたし、存在そのものに特別なものを感じていた。
杏寿郎も同じであったが、それに加え桜が居なくなった世で43年も過ごしている。
異常な程 焦がれに焦がれていたのだ。
誰も居ない方に向かって大声で挨拶をしたり、生徒の名前を全て間違えた日もあった。
天「お前重症なの分かってる?もう俺連れてくるわ。ちゃんと働けてねーもん、お前。」
杏「会ってはならないので無理な提案だな!!」
天「提案じゃなくて宣言。お前このままだとやばいぞ。」
そう言われると杏寿郎は貼り付けたような笑みを消し、眉尻を下げる。
杏「嫌な思いをさせたくない。見てくれ。」
杏寿郎はスマホを操作して天元にとある女子大のミスキャンパスの結果を見せた。
そこにははにかんだ笑顔を浮かべる桜が映っている。
杏「相変わらず愛らしいだろう。だが……、明らかに痩せているんだ。ただでさえ細いというのに。心配で心配で気が狂いそうだ。だが、俺を思い出せばもっと体調を崩して倒れてしまうかもしれないだろう。」
そう言うと杏寿郎はスマホを下ろした。
杏「頼む、無理をさせたくない。」
天「…………そ。」
天元は短く言うと社会科準備室を出ていく。
そして2人が同時に消耗しているのならやはり只のすれ違いなのではないかと思ってもどかしそうに頭を掻いた。