第64章 消えない不安と拒絶
(聞きたくない、"噂"……、ここに、 "無い" から余計に不安で………、)
優「一ノ瀬さん、大丈夫?……聞かない方がいいよ。」
優(あの人が不誠実な事をするように思えないけど……一体どうなってるんだ…。)
「…………うん…。」
しかし、ここでトドメが来てしまった。
それは聞き覚えのある甘い声、自身にも向けられたことのある声だった。
―――『相変わらず酷く愛いな。』
それを聞いて涙が滲みだすと桜は立ち上がってトイレへと走った。
後ろから女生徒達の嬉しそうな叫び声が聞こえる。
(嘘だ、嘘だ……、)
そう思ってもその独特な言い回しは紛れも無く杏寿郎のものであった。
そして桜自身も同じ事を言われたことがある。
「う…ぅ……っ…、」
桜は個室に入ると涙を溢してしまった。
見ないように、疑わないようにしてきた事を目の前に突きつけられてしまったようだった。