第64章 消えない不安と拒絶
『1ヶ月くらい前の話なんだけどさー、休みの日に煉獄先生見かけたの。』
その声は大きく、桜だけでなく優介の耳にも届いた。
(杏寿郎さんの生徒さんだ…。)
桜は好奇心から悪いと思いつつ聞き耳を立ててしまった。
『それがさ、ずっと秘密にしてたんだけど……カナエ先生とデートしてたんだよねえー。』
頭を殴られたような衝撃が走り、同時に目の前が真っ白になる。
脳裏にデートの初日でキスをし、余裕を見せた杏寿郎の笑みが浮かんだ。
(見間違いじゃ…偶然外で会っただけとか……、)
そう思っていると同じ事を考えたらしい友達が口を挟む。
『本当にデートなの?証拠はー?』
『あるよ!ほら!!ちゅーしてるのばっちり撮れてるでしょ!』
『うわ、これガチのやつじゃん。ほんとだ、カナエ先生だ。』
『見せて見せて!!うわ…うっそ、まじだ!完全にレンキョとカナエちゃんじゃん!!さねみんやばくない?』
『動画もあるんだから!ちょっと待って!!』
桜の呼吸が浅くなっていく。
そして無意識に左手の薬指をスリッと撫でた。