第64章 消えない不安と拒絶
池「では、一ノ瀬先生の歓迎会をはじめまーす!一ノ瀬先生は、」
男「一ノ瀬先生に話させろよ!」
女「あはは、確かにー。」
「あ!はいっ」
桜は掘りごたつの座敷部屋でピシッと姿勢を正して立った。
その時間は高校教師の退勤時間よりは早く、ここを行きつけにしている杏寿郎達の代わりに定食を食べる高校生と早くから酒を飲む大学生が入り混じっていた。
「初めて働くので至らない点が沢山あると思いますが、アルバイトではなく先生になれるようにという気持ちで精一杯がんばります!皆さん、どうぞよろしくお願いします!」
一生懸命伝えて深々と頭を下げると何故か笑い声と拍手が起こる。
しかし桜は気にせずにパッと顔を上げると ふわあっと花咲くように笑った。
桜は仕事場と意識するあまり、緊張から今まで同僚に対してそのような笑顔を見せた事がない。
その雰囲気に一瞬皆しんとなり、優介はその笑顔を見られた事に眉を顰めたのだった。
乾杯をしてからは周りに人が集まったり、逆に呼ばれたりと桜は目まぐるしく過ごしていた。
だが、妙なところでしっかりしている桜はノンアルコールをしっかり挟んで決して酔い過ぎないように徹底していた。
だから頭もきちんと冴えていたし、耳も機能していた。