第64章 消えない不安と拒絶
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男「一ノ瀬先生、いい加減 歓迎会しましょうよー。もう1ヶ月過ぎちゃいましたよ。」
「あ、池田先生……。あの…でも…、」
桜は同じバイト先の大学生に飲みに誘われると困ったように俯いた。
「私……、お外で飲んだ事がなくて…、その、同居してる親戚のお姉さんもあまり良い顔しないんです。」
池「ほんとお嬢様ですよね。でもいつかは経験しなきゃですよ。サシ飲みって訳じゃないんだし、ほら、立道先生もいますし!小学生の時から知ってるんなら信用あるでしょう?」
「それは……そうですが…、」
(しっかりと確認し合えたお友達だけど、男の人ではあるし…さなちゃん怒らないかな……。)
池「てゆか…そのままだとそのお姉さんのプライベートまで潰しちゃうんじゃないですか……?」
「…………………………。」
それは桜も常々気にしていた事であった。
それでもいつも早苗は『桜の方が大事だから』『私がやりたくてやってるから』と言って桜の話を聞かなかったのだ。
池「一ノ瀬先生の方から離れない限りその人もやめられないんじゃないですかね……。」
池田は確かに下心を持って誘っていたが、きちんと心配もしていた。
事実、桜の生活は異常である。
男が怖かった時ならともかく、今の過保護な状態はどう見ても直さねばならないものであった。
池「お姉さんには信用できる友達に送ってもらうって言えば大丈夫ですよ。行きましょ!」
桜はその誘いにとうとう首を縦に振った。