第64章 消えない不安と拒絶
天「そこで経験を積んでここに就職してくれたら万々歳だろ。」
杏「だが同じバイト先に桜の初恋の男がいる。」
天「あーーー……。」
杏「……何か言ってくれ。」
杏寿郎は机に肘をつき、頭を抱えて下を向いている。
そんな様子を見ながら天元は面倒くさそうな顔をした。
杏「今面倒だなと考えたろう。」
天「……お察しの通りで。初恋って言ってももう終わってんだろ?お前とデートしたんなら。」
杏「……告白を断ったと言っていた。」
天「なんだよ!じゃあ問題ねぇだろーが!」
杏「俺も交際を申し込んだが答えをもらっていない。」
天「………断られてはねぇじゃん。」
杏「そうではあるが……。」
天元はらしくなくじめじめとした杏寿郎からバッと離れる。
天「あーなんか移りそうだわ!もう一度派手に告りゃいいだろーが!!ハッキリさせろ!それでダメならまた考えればいいだろ!!」
そう言うと天元は去って行った。
杏「もう一度、か。もう少し早い段階でそうすれば良かったかもしれないな。」
1月末からバイトが始まり、その後のデートはたったの2回。
そしてもう3月に入ってしまっていた。
杏(もうすぐ桜の季節だというのに…。)