第64章 消えない不安と拒絶
(ほら…先のこと考えてくれてる。だからキスもするんだ……。)
「ふふ、気が早いですよ。でも……楽しみです。」
桜はそう言って微笑みながら繋いでいる杏寿郎の手をしっかりと握り直した。
杏寿郎も握り返して幸せそうな顔をする。
杏(たまに複雑そうな顔をさせてしまうが確実に前に進んでいる。このまま2人で過ごす時間を重ねよう。そうすれば自然と受け入れてくれるようになる。)
相変わらず杏寿郎は17時に間に合うように余裕を持って施設を出て少し外の公園を歩いた。
そして、また抑えがきかずにキスをしてしまった。
更に不幸な事にそれを見られてはいけない者に見られてしまっていた。
杏「すまない。歯止めが利かなくなってしまった。努力は…しているのだが。」
そう言いながらも杏寿郎はまたキスを重ねる。
そして赤くなった桜の頬を撫で目を細めた。
杏「ああ、相変わらず酷く愛いな。」
頬に当てられた手が恥ずかしがりであるのに俯く事を許さない。
桜は赤い顔を晒し雰囲気に流されながら自身がどうしようも出来ない沼にずぶずぶとはまっていってしまっているような感覚を覚えた。
そんな2人を見ていたのは杏寿郎を知る駒校の女生徒達だった。
そんな事には気付かず 杏寿郎はその後何度もキスをし、女生徒達が隠れた後 桜を横抱きにして駐車場へと向かった。