第64章 消えない不安と拒絶
杏「今着替えるのでタグを取ってくれ。桜、着替えておいで。」
「は、はい!あの…お代き、」
杏「学生はそんな心配をしなくて良い。着替えてきてくれ。」
「……ありがとうございます…。」
桜は赤くなるとキャーキャー言う店員に話し掛けられながら更衣室へ向かう。
「本当…、びっくりするくらい素敵な人ですよね…。」
店「お姉さんの事大好きなのがビシバシ伝わってきます!」
その言葉に桜は涙が出そうな程ほっとした。
その日はその商業施設内を巡り、只々カップルの様にぶらぶらとして過ごす予定だ。
途中にあった家具屋にも入ると、まるでこれから同棲を考えているカップルのようで桜はドキドキしたが、杏寿郎は何かを考えるようにしていてあまり視線を合わせなかった。
(……何を考えてるんだろう…。)
杏(桜と同棲出来るのはいつになるだろうか。まず交際の許可がもらえたらご両親に挨拶をして…、いや、桜が卒業するまでは早苗さんと暮らすのがベストだろう。卒業したらすぐにでも、)
「杏寿郎さん?何を考えているのですか?」
桜が遠慮気味な声を出すと杏寿郎はハッとして桜の頭を謝るように優しく撫でた。
杏「すまない、今君と同棲をするのならどうしても君が卒業してからになってしまうなと考えていたところだ!!」
その言葉に桜は寂しさを忘れて赤くなる。