第12章 それぞれの想い
「!!」
それを聞き、桜は顔を青ざめてすぐ槇寿郎の側に寄った。
そして槇寿郎に手を伸ばすと胃の隣あたりを撫で始める。
槇「な…!に、を………?」
槇寿郎はとっさに止めようとしたが、桜があまりにも必死な顔をしているので思い留まった。
そして、不本意ながらも桜の手が温かく心地よいのを感じた。
「ふう!いきなり失礼しました!」
意外に早く解放され、槇寿郎は戸惑っていた。
「槇寿郎さん……死ぬところでしたよ…。」
桜はじとっとした目で睨む。
槇「死ぬ?どういう事だ。」
「腹水、それにお酒…。お酒が関わる肝臓病の最終段階ですよ!肝臓は沈黙の臓器と言われるだけあって分かりづらいですが、本当に危なかったんですよ。」
桜は眉尻を下げて槇寿郎を見つめた。
槇「……いや、だからそれが…何で終わったかのように…、」
「槇寿郎さん、頭がいいから分かってますよね。ううん…頭がいいからこそ受け入れがたいのかな…。治しました。これが元神様の友達の力です。」
槇寿郎はおもむろに酒瓶を掴むと自身の頭にぶつけた。
―――ゴスッ
すると綺麗な色の髪の毛をくぐって血が顔へ流れ落ちる。
「えっ!わわ!確かめたいのは分かりますが!!もう…!!」
桜は慌てて頭を撫でる。
軽い傷のため一撫でで血が止まった。
槇「お前…このままじゃ……その力が知れたら……、」
傷が治ったはずの槇寿郎の声は暗い。
察した桜は困った笑顔を浮かべる。
「やっぱり槇寿郎さんは優しいですね…。」