第64章 消えない不安と拒絶
杏(…………落ち着け。早く着く事だけを考えるんだ。)
杏寿郎は汗ばむ手でハンドルを握り直すとグッと眉を寄せた。
(指に触れた……!でも逆に真ん中の方に行っちゃった、かも…。)
その時早苗はアルバイトに出掛けていて家には桜しかいなかった。
桜はベッドから下りてもう一度位置を確認する。
(やっぱり壁の方に近い、かな。)
そう思うと再びベッドに上がり手をねじ込む。
「う"ーーっ、どうしようぅ…。杏寿郎さんに連絡もしたかったのに……。」
ベッドに顔を押し当て必死になっていると結っている髪もいつもはピシッとさせているシーツも乱れていった。
そして格闘すること20分、冬なのに汗ばむ桜は半泣きになっていた。
その時―――、
―――ピンポーン
「……え?こんな時間に誰…?」
そう言いながらスマホの代わりに時計を見ると夜21時だ。
―――ピンポーン
急かすようなチャイムに桜は慌ててモニターに駆け寄る。