第64章 消えない不安と拒絶
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(あ…杏寿郎さんからメッセージ来てる……。)
メッセージの内容はまた週末に会おうという誘いだった。
週明けからずっと調子を崩していた桜はその元凶である杏寿郎からの誘いにすぐ飛びついた。
そして快諾すると持っている服の中で目立たなさそうな物を探し始めた。
(あんまり目立つものは男の人に見られるから良くないって言ってた。やっぱり思い遣りがあって大事に思ってくれている優しい人なんだ。慣れてそうなのはきっと…彼女さんがいたから。26歳なんだからそりゃ当たり前だよ。きっとデートに慣れてない私に合わせて優しい嘘をついてくれたんだ……。)
ぐちゃぐちゃになりそうな心にそう言い聞かせながら頭を整理し、桜は期待と不安を胸に週末へ向けて準備をする。
そしてオフホワイトのタートルネックニットにネイビーのハイウエストロングスカートを選んだ。
(露出もほとんどないし色合いも落ち着いてるしこれなら大丈夫、だよね。)
桜は頭を撫でてくれる杏寿郎の優しく大きな手のひらを思い出して頬を緩める。
そして恋しさと不安を解消したい気持ちから杏寿郎の連絡先を見つめ さつまいものアイコンをタップしようとした時、スマホを落としそうになって違うところをタップしてしまった。
スマホは足に当たって床を滑り、そのままベッドの下に入り込んでしまう。
「あ……結構奥にいっちゃったかも……。」
ベッドの下でスマホが光る。
その画面に映し出されているのは杏寿郎へのコール画面であった。