第64章 消えない不安と拒絶
杏「相変わらず君の観察眼は素晴らしいな!!まだ交際はしていないのだが週末共に出掛けたんだ!!所謂デートだな!!!水族館にも行ったんだぞ!!」
天「おおぉ……まじか…まじか!やったな!!煉獄!!」
杏「うむ!!一時期は男が好きなのではという噂が流れて君にも迷惑を掛けたからな!!!」
天「うん、そうそう…って、は?交際してない?何で?」
杏「それが…、桜には俺の…いや、あの時代の記憶がない。」
天「は……、」
この時代の天元と杏寿郎は同い年であり同級生であり、記憶が戻っていない頃からつるむ仲であった。
天元は杏寿郎より早く、この高校で働く3人の女性を見た時に記憶を取り戻した。
そして杏寿郎が記憶を取り戻した時には2人は大いに盛り上がり、戦友であり、同級生であり、同僚であるとても濃い関係となったのだ。
そして杏寿郎が桜と巡り会える事を天元も願っていた。
天「何でだよ。あいつは死んでねーんだから…、あーだからか。」
杏「うむ。恐らく桜の体は "川へ落ちた"、それだけを記憶している。だが、魂の方は覚えているようでな、違和感は感じてくれている。絶対に思い出すだろう。」
それを聞くと天元は少し複雑そうな顔をした。
天「で、早速アプローチかけてんのか。あいつ今何歳なの?」
杏「うむ、桜は20歳の…あの時のままだ!つい先日の成人の日に川へ落ちたらしい!!俺が記憶を取り戻した日でもあるな!!探していたら何とかその日に会えた!!!」
天「はぁ!?早く言えよ!!他のメンツには言ったのか?」
杏「すまない!!何度も伝えようと思ったのだが、いざ口に出そうと思うと 覚えられていない事が思いの外ショックだったようで口に出せなかった!!だがデートをしたので今はもう平気だ!!!」
その嬉しそうな顔を見て天元は愉快そうに笑う。
そして職員室へ行くと同僚であり縁のある 実弥、小芭内、義勇、行冥、カナエに報告を兼ねた飲み会の誘いをかけに行った。