第64章 消えない不安と拒絶
一番最初に口を開いたのは唯一経験値のあるレイラだった。
レ「ダウト。それは流石に嘘だよ。それとも見た目や性格にまずいところあったの?」
「…………ううん、すごく格好いいし…色々スマートで…余裕があって……、優しくて…………、」
桜の声が段々小さくなると蓮華はレイラを小さく睨む。
それでもレイラは気にした様子もなく、ただ桜を慰めるように撫でた。
レ「キスなんて挨拶みたいなものだよ。気にしなくて良いって。」
(挨拶………。)
レ「ちなみにその人の地毛何色?」
「……金色と…ちょっと赤いよ。」
レ「えー!それなら本当に挨拶だよ、気にしない方がいいって!適当に手を出された訳じゃないんだから元気出して!」
レイラは桜の初心さを知っていた為、唇じゃない所にキスをされただけで赤くなっているのだと思っていた。
更に外国の人間となれば挨拶でキスをしてしまうのも無理はないとも思ったのだ。
しかし、桜は杏寿郎の髪色が人種によるものでない事を知っていた。
そして、挨拶で唇にする訳がないこともきちんと知っていた。
それでもその可能性に縋りたくなった。
「……………………私、考えすぎてたかも……。」
桜はそう言うと皆に微笑む。
だが、心の中は『嘘をついた』というレイラの言葉でぐちゃぐちゃになってしまっていたのだった。