第64章 消えない不安と拒絶
(とても慣れてて初めてのようには思えなかった…余裕もあったし……。あの動画も杏寿郎さんから不意打ちでされてて私はスマホ落とすぐらい驚いてた…。よくするのかな……?それにデートが初めてって話は…?デートしなくてもキスってするものなの……?さなちゃんには恥ずかしいから同い年の学校の友達に相談しようかな…。)
そう思いながらも桜は友達に相談出来ず、それからぼーっとする事が増えてしまったのだった。
―――
女「桜ちゃん?最近様子がおかしいけれど何かあったの?」
「あ……紅葉ちゃん…。ごめんね、何か聞き逃しちゃってたかな。」
学科の友人、紅葉は講義が終わっても席を立とうとしない桜を心配そうに覗き込んでいた。
そこへ講義室を出ようとしていた蓮華と菫も寄って来る。
蓮「私もおかしいと思ってるんだけど聞いても教えてくれないの。」
菫「甘いもの食べる?」
「食べたいー。」
すぐに嬉しそうな顔をする桜と楽しそうに餌付けする菫を紅葉と蓮華は困った様に見つめた。
そこに帰国子女でハーフの明るい女生徒、レイラがやって来る。
レ「なになに、桜ちゃん元気ないの?」
隠せない好奇心を孕んだ声に蓮華が少し眉を寄せる。
蓮「目に見えておかしいでしょう?」
レ「おいしそうに食べてるよ。」
蓮「食べてる時は例外なの。とにかく最近ぼーっとしてる事が多いわ。早苗先輩が送り迎えしてくれてるから大丈夫だとは思うけど……。」
桜はマドレーヌを綺麗に食べ終わると申し訳なさそうに眉尻を下げた。