第64章 消えない不安と拒絶
早「迎えに来られた時はどうなるかと思ったけどとても誠実な人ね。」
「………………うん……。」
早苗に話し掛けられるも桜は車に乗り込もうとする杏寿郎に気付いてもらおうと手を振りながら上の空な返事をした。
何となく見上げた杏寿郎がすぐに気が付いて笑いながら手を振り返す。
桜はすぐにパッと顔を輝かせたが、車が見えなくなってしまうと眉尻を下げながら早苗を振り返った。
「…………誠実な人だよね。」
それが少し確認のように聞こえ早苗は眉を寄せる。
早「……まず中に入ろ。ほら。」
「うん。」
桜は自身の唇に触れながら家へ入った。
早「歌舞伎の後は何してたの?」
「え、えっと……ご実家に行っ、」
早「はぁ!?実家って…、え?もう付き合ってるの?」
「ううん!まだなんだけど…ご家族も会いたがってたみたいで……。」
早「待った。」
早苗は一度桜に手のひらを向ける。
早「そもそもどうやって知り合ったのか、何者なのか教えて。」
それに頷くと桜は同窓会の夜に杏寿郎に会った事と、昔に知り合っていたようだという事、更に家同士の関係もあった事などを話した。
記憶が曖昧なほど幼い頃に親戚の集まりで誰かから鬼の話を聞いた事があった早苗は 桜の話を聞き終えると少々興奮気味になっていた。