第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「1人で外せるという話は本当か?」
「えっ、あ……!」
呆けていてシートベルトを外す事を忘れていた桜は再びかちゃかちゃと音を立て、笑う杏寿郎に外してもらった。
その余裕のある笑みと慣れたキスに桜の心が少しざわつく。
(デートが初めてって…本当なのかな……。)
杏「どうした。おいで。」
「は、はい!」
桜は杏寿郎に手を差し伸べられるとそれを握って車を下りた。
早「えっ?もう帰ってきたんですか……?」
杏「いや、17時を過ぎてしまった。健全な時間に送り届けると約束したのにすみません。」
早(17時って……小学生の門限じゃない。)
早「いえ…十分です……。桜、楽しかった?」
「うん!とっても楽しかった。」
早「そう。良かった…。」
早苗は笑みを浮かべる桜の頭を撫でると杏寿郎に視線を戻す。
すると杏寿郎はデパートで買った高級弁当を差し出した。
杏「中途半端な時間になってしまったので困るかと思い弁当を用意しました。良かったら食べて下さい。」
「え"っ!1桁違うお弁当、私達のだったのですか……!」
早「……1桁?ご丁寧にありがとうございます。頂きます。」
早苗は杏寿郎の対応に感心しながら弁当を受け取る。
杏寿郎は最後にまた桜に優しい瞳を向けると『また誘うので気が向いたら会ってくれ。』と言ってから去って行った。