第63章 久しぶりで初めてのデート
「実は今日さなちゃん……親戚のお姉さんの名前は早苗さんというのですが、さなちゃんを私のアラームで起こさせてしまったのでお詫びも兼ねて何かを買いたいと思っていたんです。助かりました!」
杏「……いつ買う予定だったんだ。まさか送り届けた後1人で外に出るつもりだったのか。」
「あの…それは……、」
杏「駄目だ。早苗さんにも言われているのではないか?極力1人にならないでくれ。それで何かあったら早苗さんも酷く悲しむぞ。」
「…はい、気を付けます。」
桜は杏寿郎を真っ直ぐ見ながら素直に頷いた。
杏寿郎はその態度を見ると柔らかい空気を取り戻し、改めてデパートへ向かう。
そして杏寿郎は桜が1桁間違っているのではないだろうかと思うような高い弁当を2つ買い、桜は評判だという焼き菓子を買った。
(杏寿郎さん、本当によく食べるんだなあ。)
―――
帰りの車の中、桜はスマホを手に持ちながら黙り込んでしまっていた。
動画について悩んでいたからだ。
明らかにおかしい雰囲気であった為 杏寿郎も様子を見ていた。
杏(これは先程のように別れを惜しんでいる訳ではないな。)
杏「遠慮する必要は無いぞ。」
杏寿郎にそう言われると桜はビクッと肩を跳ねさせて目を大きくする。
自身の心を読まれるとは思っていなかったのだ。