第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「なかなか見応えがあったな!あの大きな種類のイルカが特に愛らしかった!」
「はい!ふふ、私もそう思います。とっても可愛かったです!」
杏寿郎はそう言ってふわふわと微笑む桜を愛でるように見つめてから腕時計に目を遣る。
杏「もう16時半か。ここから君の家までは20分程なのであと10分したら出よう。他に見たい生き物はいるだろうか。」
「え、あ……じゃあ、ペンギンを…。」
桜は一通り見るのだと思っていた為、急に寂しくなりながらそう小さな声で答えた。
すると杏寿郎はすぐにそれに気が付く。
杏「また次がある。今日は初日で俺達は出会ったばかりだろう。お姉さんが心配してしまうぞ。」
「確かにそうですね…。つ、次も…本当に会ってくれるのですよね……?」
その桜の縋るような声に杏寿郎は少し呆れたように笑った。
杏「当たり前だろう。俺が君を口説いているのだぞ。君が断っても俺は誘い続ける。おいで、ペンギンを見に行こう。」
桜は杏寿郎の言葉を何度も胸の中で繰り返しながら無意識にぎゅっと強く杏寿郎の手を握り返す。
すると堪えきれなかった杏寿郎は桜に悟られないように眉尻を下げながら笑った。
―――
杏「少し寄って良いか。」
水族館を出た杏寿郎はそう言いながら駅の手前にあるデパートを指差す。
桜は早苗へのお土産を買いたいと思っていた為すぐに頷いた。