第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「丁度イルカショーが始まるみたいだ。先に行こう。」
「え!はい!!」
パンフレットを見て杏寿郎がそう微笑むと桜も緊張を忘れて嬉しそうに微笑み返す。
「結構席が埋まっちゃってますね。あ、あそこ空いてますよ!」
杏「待て。恐らく濡れる場所だ。君が風邪を引いたらと考えると生きた心地がしない。……あちらにしよう。おいで。」
杏寿郎はすんなりと2人分の席を確保すると自身のジャケットを置き、桜の手を引きながら飲み物を買いに行った。
杏「すまないな。本当なら席で座っていて貰いたいのだが、先程から大勢の男の視線が君に向いている。1人にさせれば攫われてしまいそうだ。」
「そんな事はないと思いますが……、でも全く苦じゃないですしお気持ちも嬉しいです。」
杏「……相変わらず自覚が足りないな。いいか、君は異常なほど酷く愛らしい。ここへ来てからもう随分と君に見惚れる男達を牽制したぞ。近寄る男全てを警戒した方が良い。」
「は、はい…。でも、じゃあ……杏寿郎さんも…?」
桜が首を傾げながらそう問うと杏寿郎は目を大きくさせた後に色気のある笑みを浮かべる。
杏「ああ、そうだな。1番警戒した方が良いかもしれない。」
杏寿郎が自身の下で数え切れない程羞恥の涙を流した桜を思い出しながらそう言うと、桜は真っ赤になりながら文字通り "杏寿郎も警戒すべき男だった" のだと認識してしまった。
イルカショーは2人が想像したものと異なり 水や光の演出とのコラボレーションがムードを作り出していた。