第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「いきなりすまない。悪い男が居たので君を隠してしまった。」
「あ……そうだったんですね。ありがとうございます…。」
その赤い顔を見る度に杏寿郎の期待は高まり愛しさも増していった。
そうして桜を落ち着かせようと頭を撫で続け、それに更に桜が赤くなっていると行列の先頭近くまでくる。
杏「……よし。君に送っておいたのでそのコードを使ってくれ。」
「…………え?」
そう言いながら慌ててスマホを確認すると杏寿郎からQRコードが送られてきていた。
並んでいた列はチケット売り場ではなく入場ゲートへ続く列であり、そして水族館に決まった時点で杏寿郎はチケットを購入していたのだ。
「え、いつの間に…!」
杏「ああ、休日はその場で販売していないと書かれていたのでな。ここを調べた時に取っておいたんだ。」
(歌舞伎の席も高そうな場所だったのに用意してくれてて…水族館まで……。さすがに奢られすぎだよね。)
「あのっ、」
杏「君はまだ学生だろう。大人に気を遣おうとしなくて良い、甘えておきなさい。」
そう言われ髪を梳かれると桜は赤くなって大人しく頷いた。
一方大人しく甘えてくれる桜の様子に杏寿郎は頬が緩みそうになるのを必死に抑えていた。
杏(愛らしいにも程がある。この文句は使えそうだな。)
そうして杏寿郎が用意したウェブチケットで中へ入ると暗さと若い男の多さ故に杏寿郎が自然と手を握る。
桜はそれが杏寿郎の優しさなのだと理解していたが心臓がうるさくてつい体に力が入ってしまった。