第63章 久しぶりで初めてのデート
「わ…私はイルカが好きです。」
杏「そうか!これから行く水族館はイルカショーの評判が良いそうだぞ。楽しみだな。」
「わ!そうなんですか!」
桜はずっと赤くなって眉尻を下げていたが、イルカショーの話を聞くとぱあっと花咲くような笑顔を浮かべた。
それを横目で見ると杏寿郎は安心したように微笑む。
杏(少しからかい過ぎてしまったな。成人したばかりの男慣れをしていない子に大人気ない事をするとは不甲斐ない。反省が必要だ。)
「水族館は色々あって7歳から行ったことなくて…、とても……本当にとても楽しみです。」
杏「7歳、か…無理もない。俺も久しく行っていないので楽しみだ。」
杏寿郎の含みを持たせた言い方に桜は目を大きくした。
「もしかして……………な、7歳から続いてた事も…知っていらっしゃったりするのでしょうか……?」
桜は7歳からの8年間、そしてその後も両親にさえ黙ってきた1番の秘密を自身が話した可能性があるのだと知り、酷く驚いていた。
一方、杏寿郎は桜が体験した理不尽な暴力を思い出すと少し眉尻を下げながら口を開く。
杏「……ああ。命を落とさなくて本当に良かった。大の大人が……今の君でさえ か弱く命を落としてしまいそうなのに、よりにもよって少女に手を出すなど許せない事だ。それもあの人数だろう。」
桜は仔細まで言われ思わず固まってしまった。
「私、本当に杏寿郎さんの事を信用して…甘えていたんですね……。」
杏「そうだと俺は信じている。君は俺の腕の中で何度も泣いてくれた。……色々な意味でな。」
「私が……?」
杏寿郎の言った "色々" がどのようなものかは分からなかったが、人前で滅多に泣かない自身が何度も涙を見せたと知り桜は再び目を丸くした。