第63章 久しぶりで初めてのデート
「飲み会は…、私と親戚が同居しているお家で何回かしましたが 全員私の大学の部員…女の子です。男の人とどころか、お外でお酒を飲んだことは成人式の日以外では1度もないです。」
その言葉に杏寿郎は肩の力を抜く。
杏「そうか。君が大学で待てず 俺に仕事がある以上、君を守りきれない。必ずお姉さんと帰り、一人になったり油断したりなどせずにきちんと自衛するんだ。いいな。」
「……はい。」
桜はそのやり取りに懐かしさを覚えつつしっかりと頷いた。
そしてこの流れを作った張本人である槇寿郎はそれをただ傍観していた。
槇「……だいぶ話が脱線したが、結局桜の体調はどうなんだ。」
「す、すこぶる元気です!!」
杏「無理……している訳ではないようだな。ふむ…。」
明らかにまだ帰りたくなさそうな桜を見つめて千寿郎は再び助け舟を出した。
千「兄上、桜さんは大学へ通い、19時まで部活動をする程度の体力はあるんですよ。僕は今、桜さんが体調を崩すとは思いません。」
「千寿郎くん……。」
味方を見付けて心底嬉しそうにしている様子から漸く桜がどれだけ帰りたくないと思っているのかが伝わり、杏寿郎は頬を緩ませた。
杏「そうだな…あと少しだけどこかへ寄ろう。行きたい場所はあるだろうか。」
「……っ!!」
その言葉に桜はあからさまに目を輝かせる。
しかし次第に眉尻は下がっていった。