第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「君は……、それが出来ると知って油断したのではないか。躱せると喜んだのではないか。」
「あ……それは、その、」
杏「図星だろう。君が出来るようになったのは躱すまでだ。絶対に押さえ込もうなどと思ってはならないぞ。頼むから危険な事はしないでくれ。」
桜は杏寿郎が心から心配してくれているのだと理解するとほっとしながらしっかりと頷いた。
しかし杏寿郎は眉を顰めたままだった。
杏「時間さえ合えば迎えに行くのだが……。」
槇「お前の学校から桜の大学までは遠いのか。」
杏「車で20分かからない程度ですが桜の部活は19時までで、俺の方も19時までです。その後もすぐに出る事は出来ないのでどうしても19時半を過ぎてしまいます。」
槇「それだと間に合わんな。桜は学校で待てないのか。」
「女子大だからか保護者から意見が来るようで遅くまではいられないようになっているんです。早くしないと警備員さんに追い出されてしまいます。」
杏「それは駄目だ。」
槇「随分と厳しいのだな。杏寿郎の大学は24時間入れたぞ。研究室に泊まる事も出来たと聞く。」
「えっ」
杏「うむ。俺は家に帰らなかった事はないが確かにそういった友人はいたな。」
「わ…違う世界だ……。」
槇「そうは言っても女子大なら交流校が引く手数多だろう。サークルに入っていれば他の大学へ行く機会も多いのではないのか。」
杏「桜が入っているのはサークルではなく部活動です!きちんと顧問がいる中で活動しています!!」
槇「確かにサークルと比べたらお堅いのだろうが、交流校くらいはあってもおかしくないだろう。大学生であれば顧問がいない間にそこと飲み会など、」
「し、した事ないですっ!!!」
話がどんどん変な方向へずれ、それにつれて杏寿郎の顔が険しくなっていくのを見ていられなくなった桜は思わず大きな声を出した。