第63章 久しぶりで初めてのデート
杏「君が愛らしくて堪らないそうだ。」
「えっ」
話が見えないにも関わらず瑠火が否定せずに片付けを始めてしまった為、桜は首を傾げながら赤くなった。
杏寿郎はその隙に注意されたにも関わらず桜の頭を再び撫で始める。
杏「もう少しゆっくりしたら家まで送ろう。ここからだと30分程掛かってしまうが耐えられそうか…?」
「え…、」
桜はもう少し一緒に居られると思っていた為すぐに返事を出来なかった。
時計を見ればまだ15時30分である。
一方、杏寿郎は横抱きにして移動していた事が多かった為に自力で歩かせた桜の体力を案じ、帰りの30分さえも気にしていたのだ。
その様子を見た千寿郎が助け舟を出す。
千「兄上…、もう少しどこかへ寄ってはどうですか?あね、桜さんは少し……その、寂しそうに見えます。」
そう指摘されて桜を見ると、肯定を示すように真っ赤になっていた。
しかし杏寿郎の眉尻は下がる。
杏「だがこれ以上連れ回せば体調を崩させてしまう。同居しているお姉さんにも健全な時間に帰すと約束した。」
千(さすがに健全すぎるのでは……。)
槇「確かに桜は弱そうだからな……、鍛えた方が良いのではないか。」
「あっ、でもこの前 道で男の人達に襲われた時、全部躱せたんです!少しも掴まれませんでした!!」
杏「男に襲われただと。」
杏寿郎の纏う空気が重くピリッとしたものに変わる。
桜は優しかった杏寿郎の変化に思わず身を震わせた。