第12章 それぞれの想い
「どうしよう…見つからない……。」
顔を洗い終えた桜は客間でお守りの白石を探していた。
(昨夜、この部屋で寝ちゃいそうになった時に持ってた記憶はあるんだけど…。)
"転がって何処かに行っちゃったのかな…" と部屋の隅々まで探すも見当たらない。
桜は、毎朝毎晩その石を抱く習慣があった。
神社の跡地で見つけたその石を持つと、桜はいつも安心感と温もりを感じるのだ。
記憶を失くした後もずっと何か懐かしい気持ちを思い出しながら、石を手放さなかった。
「あとで杏寿郎さんに訊いてみよう…!」
"とりあえず今探せるところは探した!" と切り替えて桜は台所へ向かう。
(千寿郎くんもういるかな…昨日はお夕飯の支度手伝えなかったから今日はちゃんとしないと!)
しかし、台所を覗いても千寿郎はまだいなかった。
(あれ…もしかして結構早く起きちゃった…?というか今何時なんだろう…。)
桜はそう首を傾げながらも、 "時間が余ってるなら鍛錬をしよう!" と庭へ下りた。
(わ、やっぱり!体軽くなってる…!)
先程、一瞬ユキの姿になったときにあった違和感は体の軽さだった。
筋肉痛は三日続くかと思うほど酷かった為、桜はとても驚いたが "これならもっと早く強くなれる!" とすぐ明るい気持ちになった。
「まずは走り込み!基礎体力は絶対!!」
そう気合いを入れると桜は勢い良く走り出した。