第12章 それぞれの想い
ユキも元々、本当に人の事が大好きだった。
人の子は皆 愛しいと思っていた。
だが、桜の生活を見て段々とその気持ちは揺らぎ、
五年前――…弟のみのるを巻き込んだ決定的な事件によってユキの考えは変わってしまった。
何度信じても一度も報われなかった。
善良にみえた男も豹変する。
桜の空気がそうさせるのかもしれない。
桜じゃなければ手を出さなかったのかもしれない。
それでも桜は桜である事をやめられない。
『でも、今は違う。桜の姿を変えてあげることができる。』
『しかし…どんなに起きていようとしても同じ入れ物にいるからか桜と共に眠ってしまう…。』
―――せめて、起きている間だけでも守らなければ…
そう思うとユキはまた杏寿郎に強い警戒心を持った。