第63章 久しぶりで初めてのデート
一方、予想の遥か斜め上をいかれた早苗は口を薄く開いたまま固まっている。
杏「帽子はあるだろうか。いや、せっかく男を克服したのだから顔を隠して歩かせるのも避けたいな。今世では使った事がないので "効く" か分からないがそうも言っていられない。うむ、俺がどうにかしよう!もう安心だ!!」
「安心、ですか?」
杏「うむ!!落ち着いて見てみると酷く愛らしいな!!!髪もハーフアップにしているのか!似合っているぞ!!特に……、」
杏寿郎はそう言いながらシャツワンピースの色を見て目を細めた。
杏「その色を選んだのには理由があるのだろうか。思い入れ深い色だ。」
「あ…私がこの色に一目惚れして……。」
杏「そうか、良かった。」
杏寿郎のどこまでも優しい瞳に早苗は毒気を抜かれる。
早(あぁ…、この人なら大丈夫だ……。)
早「…………時間、大丈夫ですか?何かに合わせたような待ち合わせ時間でしたが。」
杏「む、そうだった!桜、歌舞伎を観に行くぞ!!開演は11時だが早めに行きたい!」
「えっ」
早「歌舞伎!?」
予想外で健全なチョイスに気が抜けた桜と早苗は思わず笑い出した。
杏寿郎はそんな2人に首を傾げる。