第63章 久しぶりで初めてのデート
「う、うん……。でも何回も乗ってるよ……?」
早「何してんの!いつの間に…、とにかくダメだよ。」
早苗はリビングまで桜を連れて行くとソファに座らせる。
「でも……、杏寿郎さんは、」
―――ピンポーン
「あ!はい!!」
早「桜!!」
桜が早苗の制止を振り切って慌てて玄関に向かい鍵を開けると、杏寿郎は眩い笑顔を浮かべていた。
しかし、桜の装いと化粧を見て笑みを消す。
杏「その格好は駄目だ。」
「え………………、」
どこかで褒めてくれるのではと思っていた桜はショックを隠しきれず思わず俯いた。
そこに眉を顰めた早苗が近付いてくる。
早「その言い草はないんじゃありませんか。あなたと桜がどういった経緯で知り合ったのか知りませんが、それでも……、この子はずっと今日を楽しみにしてて、昨日一日かけてこの服を選んだんですよ。」
杏「そうだったのか。それはとても嬉しいが…、だが、どう見ても危険だろう。何故化粧までしている。攫われたらどうするんだ。君は非力で体も小さい。元より指1本たりとも触らせる気はないが、今は君を横抱きにしながら移動する事は叶わない。……いや、やろうと思えば出来るは出来るな。だが君は恥ずかしがりだろう。許してくれるか。」
(よ、横抱き……?)
桜は急いで首を横に振る。
すると杏寿郎は再び眉を顰めた。