第63章 久しぶりで初めてのデート
コール音が耳に響き、心臓が壊れてしまいそうな程速く脈打つ。
杏寿郎は2回目のコール音が鳴る前に電話に出た。
杏『桜!!君から掛けてくれるとは…ありがとう!』
「いえ……で…電話できて私も嬉しい、ので…。」
はにかみながらそう伝える桜の声を聞くと、杏寿郎は片手でバシンッと口を覆った。
杏『(愛いッ!!!!)』
「え…?す、すみません、くぐもってて聞き取れなかったです。」
杏『わざとだ!!それより明日の事なのだが、君の家まで迎えに行っても構わないか?』
「はい!何度も乗せてくれてありがとうございます。同居してるお姉さんも明日の事を知っているので驚かないと思います。」
杏『そうか!それは良かった!知っているというのはデートである事も知っているのだろうか!!』
「……はい…………。」
杏『……………………………………。』
(あ、あれ…………?)
「あの……だめ、でしたか………?」
杏『いや、とても嬉しい。……本当に楽しみだ。』
杏寿郎の噛み締めるような声に桜の頬が自然と緩む。