第12章 それぞれの想い
桜は落ち込む気分を変えようとお風呂の隣にある洗面台へ向かった。
「ユキは頑固だわ。離婚よ、離婚。」
手に水を貯めながら桜は呟く。
ユキには性別がなかったが、どちらかと言うと母親のような感情を抱いていた為 桜の言葉を聞いて頬を緩ませた。
『相変わらず桜はおかしな事を言う。いつ結婚などしたのだ。』
確かにユキは過保護だが、最初からこうではなかった。
桜と出会ってから、彼女を知るにつれて過保護になってしまったのだ。
正確に言うと、胸に宿り裏山以外の桜の生活を見てからだ。
だが、そうなるには十分の理由があった。
元々、人を疑う事を苦手としていた桜は何回も様々な被害に遭っていた。
被害に遭っても、遭っても、何度も相手の良心を信じた。
それが報われる事はなかったが、桜は失望する事なく人を信じ続けた。
―――そしてその加害者のほとんどが若い男であった。
両親も誰も気が付かなかったが、父親が勤める大学で桜は六歳から約八年間トラブルに巻き込まれていたのだ。