第63章 久しぶりで初めてのデート
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「ユキ様…、ユキ様ー…!」
桜は小さい頃のように裏山を登りながらユキを呼ぶ。
すると登り切るまでは決して出て来てくれなかったユキが姿を現した。
「ゆ、ユキ様……、」
ユキの体は記憶より大きくなっており、毛も光って見え 言葉を失う程に美しく神々しかった。
ユキは様付けで呼ぶ桜に少し悲しそうに目を細めたがすぐに鼻先で頬を撫でて会えた喜びを伝えた。
ユ『桜、待っていたよ。上へおいで。』
「…はい!!」
それから2人は桜が大きな独り言を言っていると思われないように境内の端まで行った。
ユ『暴力は止んだね?』
「は、はい…何故それを……?」
ユ『すまない。元々は私が桜にくっついてしまっていたからなんだ。気付けなかった…辛い思いをさせてすまない…。』
そう謝られても桜の記憶の中の神社はきちんと機能していた。
とても神が留守であったとは思えない。
「い、いえ、たぶん違います。」
ユ『違わない。いずれ思い出すよ。靄が掛かってしまっているけれど、魂に刻まれた色が私には見える。私はもう桜を贔屓する事は出来ないが愛しい事には変わらない。いくらでも手を貸そう。』