第63章 久しぶりで初めてのデート
―――
(やっぱり怖くない。暴力もされる気がしない。じゃあユキ様は今……、)
パラレルワールドは存在し得ないが、信仰を得た神であるべきのユキに関しては例外で前と異なる点がいくつかあった。
まず桜とユキは友人関係になっておらず、桜の中で "ユキ様" は神様のままだ。
以前ユキが桜と友人になり胸に入ってしまった日と同じ日、桜は運命をなぞる様にユキの姿を見る事が出来なくなってしまったが、ユキは胸の中に入らなかった。
そしてユキは信仰を失わないまま癒猫様として神の務めをこなし、神社は怪我の治りが早くなると評判になっていたのだ。
(暴力がなくなった今なら見える気がする。お話ししたい。きっと何か知ってるはずだから…。)
そして桜は何の前触れもなくユキが見えなくなった日と突如始まった暴力の日が同じ日であった為、ユキが何か知っているのではないかと思っていたのだ。
揺れる電車の中、視線を集めている事に気が付かない桜は少し憂いた表情を浮かべながら外を見ていた。
―――
(『乗り換え駅に…、ついたよ』、っと。)
桜は早苗と勇之にそうメッセージを送ると乗り換え先のホームへ降りようとする。
しかし――、
勇「桜ー!!」
「お父さん…っ」
心配性の勇之が乗り換え駅まで迎えに来ていたのだ。
勇之ははじめてお使いをした子を褒める様に桜の頭を撫でる。
桜は照れ臭そうにしながらもそれを微笑みながら受け入れた。