第12章 それぞれの想い
そんな事を思い出すと、それに応えるように胸がぽかぽかと温かくなった。
「ふふ。ユキも懐かしい?」
桜は久しぶりに友人と会話できた気がして少し涙が出た。
しばらく胸に手を当ててから目を瞑る。
「…………ねえ、ユキ…わたし杏寿郎さんの事は全然怖くないんだよ。心配しないで……。」
"今ならきちんと分かってもらえる" 、そう思って桜は静かな声を出した。
しかし、途端に胸にあった友の温もりが消えた。
「…えっ…ユキ………?」
それは桜の言う事を拒絶しているかのようだった。
こんなに近くにいるのに友人の事が分からない。
「本当に杏寿郎さんの事、怖くない。むしろ…心開けていると思う……。」
そう言ってみるが、どんなに待っても胸は温かくならなかった。
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『だからだよ、桜。』
ユキは譲れない。
『桜は甘い。信じすぎた。』
『良い人だとお前が信じても、私はもう疑いを捨てきれないんだよ。』
元々は人が大好きだった癒猫様。
だが、今はもう考えがガラッと変わってしまっていた。