第63章 久しぶりで初めてのデート
「やっぱり本当はそっちを続けたかったんじゃないの…?私の為に大学から楽器を始めたんじゃ…、」
早「それ以上言ったら怒るよ。私は私がやりたいようにやってるの。」
「……………うん…。ありが、…っ!」
早「桜!!」
早苗の血の気が引く。
いち早く気絶させた筈の男が勢い良く立ち上がって桜に掴みかかろうとしていたのだ。
しかし――、
早「………………え……?」
捕まる様子が無かった為 急いで助けに入ろうとした早苗の足が思わず止まった。
「さなちゃん!私なんか目覚めた!この人すっごく遅く見える!きゃーっ!たのしい!!」
早「ば、バカ!!」
早苗は慌てて駆け寄ると再びその男を背負い投げた。
そして間髪入れず桜の頭をスパーンと叩く。
「………………なんでぇ…?」
早「避けられたのはめでたいよ。あいつ決して遅くもなかったのに。でも楽しむな!油断したらだめ。…ほら、長居しないで帰るよ。」
「……うん………あ、まって、皆にお水だけ買っておきたい。」
桜はそう言うと近くの自販機に行って水を買い、気絶している男達の脇に置いて回ってから早苗の元へ戻ってきた。
早苗はその甘さに溜息をつく。
そして桜の手をパシッと掴んで歩き出した。
桜は手を握られた事が懐かしいような気がして思わず頬を緩ませる。