第62章 エンカウント
杏(桜が俺より先に惹かれたという話は本当だったのだな。無防備とも言える程すぐに心を開いてくれた。あの顔で拒絶されたらどれ程辛かっただろうか。)
そう思いながら杏寿郎はネクタイを緩めると顔を両手で覆いながら仰向けにベッドへ倒れ込む。
杏(ただひたすら嬉しい……記憶を取り戻してくれたらもっと嬉しいが、きっと桜は俺を選んでくれる。そんな予感が、いや、確信がある。)
杏「あれからずっと君に焦がれていたんだ、桜。早く約束を果たしてくれ…。」
桜は勇之から渋々ではあったが許可を貰うと優介を通して塾で働く為のテストが行われる事を知った。
「さなちゃん。バイト前に本社で一斉テストがあるんだって。日程が決まってて色んな所から塾講師をやりたい人が集まって……。」
早「大丈夫よ。桜 勉強は出来るんだしきっとテストも簡単だから。」
「そうなのかなあ……。」
早「でも、そうなるとバイト始めるのは…立道くんと一緒に働けるのは少し先になっちゃうんだね。残念残念。」
「……?…うん。あ、あと次の日曜ね……その…、出掛けるんだけど…土曜にその日の服を一緒に買いに行ってくれない、かな……?」
早「もちろん!デートだなー?お姉さんに任せなさい!!」
「えっ、何でわかったの…!?」
早「おねえさんは何でもお見通しなのよー!」
早苗は勘違いをしながらそう自信満々に言い放った。