第62章 エンカウント
「さ、さなちゃんには教えないよ。すぐからかうもん。」
早「えー!つれないなあ。桜の事をこんなに愛しているお姉さんは他にいないんだぞー。」
「も、やめてっ、あはは、くすぐらないでー!」
早苗は桜が未だに優介の事を慕っていて、数日前の同窓会で付き合い始めたのだと勘違いをしていた。
早「よし!桜、そろそろ出るよ。今日2限からでしょ?」
「うん!合わせてくれてありがとう。もう男の人全然怖くないし平気なんだけどね。」
早「だーめ。変な虫が付いたら私が勇之さんに殺されちゃう。」
二人はそんな会話をしながら部屋を出て真冬の大学へ向かう。
そして講義を受け、部活を終え、帰ろうとした時―――、
優「一ノ瀬さん!!」
「……えっ!?立道くん?」
正門の前で寒さに震えながら優介が立っていた。
優介は桜の姿を見ると嬉しそうに笑みを浮かべ走り寄って来る。
隣りに居た早苗は桜に『帰りはちゃんと送ってもらいなさい。』と耳打ちをして先に帰ってしまった。
「え……さなちゃん…、」
優「女子大ってすごいね。守衛さんに止められて入れなかった。」
「あ…うん。でもここの学生と一緒にいれば許可が下りる事が多いって聞いたことがあるよ。それよりどうしたの?寒かったでしょう。」
優「うん…実は提案があって……、塾の講師のバイトなんだけど一緒にやらない…?」
桜は直接言わなくても良さそうな話題に思わず目を大きくした。