第62章 エンカウント
勇「鬼……鬼から…重勇、私の曾祖父のお父さんだね。重勇さんを "煉獄様" が助けた、と書いてある。そしてその "煉獄様" の息子さんが今度は頼勇さんの奥さんを別の鬼から助けた…。鬼か…………。」
由「鬼ねぇ……鬼って呼ばれる怖い集団にでも狙われてたのかしら。写真だけ見ても一ノ瀬屋はとても立派な旅館だって分かるし、繁盛していればそれだけ目も付けられるわ。」
勇「いや、曾祖父は……鬼は、文字通り鬼だと言っていた。人を喰う鬼だと。私はそれが信じられなくて……からかわれているのだと思ってあまり話を聞かなかったんだ。…鬼狩り様についても、それに一ノ瀬屋が協力していた事についても……全く信じてあげられなくて……。でも煉獄様の血筋の人が…あの風貌の人が現れるとは…、」
「……人喰い鬼……鬼狩り様…………。」
(杏寿郎さんは知ってるのかな……。)
桜は一緒に持ってきた写真の中の杏寿郎に似た男を見つめるとスマホを取り出した。
―――ピロンッ
杏寿郎が家に帰ってすぐ、普段はずっとマナーモードになっているスマホがメッセージの受信を報せた。
杏寿郎はすぐにスマホを取り出すと見覚えの無い差出人を見てパッと笑みを浮かべる。
杏(思ったより早く連絡をくれたな。)
急いでメッセージアプリを開くと桜のアイコンに目を奪われる。
それは桜の幼少期のもので 浮かべた笑顔は今の桜と同じ屈託の無い愛らしいものだった。