第62章 エンカウント
(………たぶん、この人と一緒になるんだろうな…。)
そんな事を何気なく思い、ハッとすると恥ずかしさから俯く。
(私……、なんか変だ。会ったばかりなのに…、でも…、)
顔を恐る恐る上げて杏寿郎を見上げると、挨拶が済んだのか杏寿郎も桜を見つめていた。
そして優しく頭を撫でられる。
杏「女子大に通っていると言っていたな。悪い虫など寄せ付けないように良い子にしているんだぞ。帰りはどうしているんだ。俺が迎えに行こうか。」
「え、あ、いえ!同じ部活の親戚のお姉さんと同居しているので帰りは安全です!それに部活が終わるの19:00ですし…、」
杏「そうか。フルートをやっているとも言っていた。管弦楽部にでも入っているのか。」
「………は、はい…。」
(何でこんなに色々知っているんだろう…。やっぱり私が何かを忘れているのかな……。)
杏寿郎は『そうか。』と言いながら褒めるようにまた頭を撫でると改めて両親に向き直る。
杏「玄関で長々と話をしてしまい申し訳ありません。では失礼します。」
勇「いや…、娘を送って頂いてありがとう。」
由「色々とお話がありそうですし、今度ゆっくりいらしてくださいな。」
杏寿郎はその言葉に微笑むとビシッと頭を下げてから踵を返し、車に乗り込む直前に振り返って桜に優しく微笑み掛けた。
杏「また会いに来る。」
「は、はい!!………ま…待ってます…っ!」
それを聞くと杏寿郎は目を大きくした後、とても嬉しそうに笑った。