第62章 エンカウント
勇「その、髪…目………。曾祖父の話は本当だったのか……。」
「お父さんの…曾祖父………頼勇さんから何か聞いてたの…?」
勇「煉獄…様は、一ノ瀬家の血を繋いでくれた。杏寿郎さんのご先祖様が私達の先祖の命を助けてくれたと言っていた。それも二度も。」
由「まあ!まあまあ!なんて運命的なのかしら!!それで杏寿郎さんは、桜に好意を抱いてくださっているのかしら?」
由梨はそう言いながら桜の手を大事そうに握って離さない杏寿郎の大きな手に目を遣る。
杏寿郎は由梨に向き直ると眩い好青年の笑顔を浮かべた。
杏「はい!!生涯添い遂げたいと思っています!!!」
「え、…あぅ、」
ハッキリと言われると桜はまた真っ赤になる。
勇之も由梨も、桜のその様な表情は初めて見た。
勇「だ、だけど、彼の話は今まで聞いた事がない。なのに桜、それではまるで…、」
由「まるでもう恋してるみたいねえ。」
由梨は両頬を自身の手で包みながら微笑み、首を傾げる。
見るからに楽しくて堪らない様子だ。
杏寿郎は由梨の自由な反応に少し微笑んだ後、スッと真面目な表情を作った。
杏「今日、昨日の話では…、いえ、十年、二十年の話でもありません。俺は桜さんを心から慕っています。…まだ彼女から答えを聞けていませんが、交際出来るまでに至りましたらまたご挨拶させて頂きます。」
そう言って杏寿郎が深々と頭を下げると両親はその真剣さに目を大きくした。
その様子を桜は杏寿郎の少し後ろから眺めていた。