第62章 エンカウント
杏「何故シートベルトを外せなくなるんだ。酔っているのか?」
「め、迷惑にならないように急いで降りようと思ったら焦って外れなくなっちゃって…!」
その二人の様子を優介は後部座席からじっと見つめていた。
杏寿郎はその視線に気が付くと不敵な笑みを返して屈み、桜の額にキスを落とした。
優「……なっ!!」
「え、」
杏「む、外れたぞ。おいで。立道君はここで待っていると良い。」
(さ、さっきはまだしないって言ってたのに……。)
杏寿郎は桜の手を握り、優しく引いて車から降りさせるとバタンッとドアを閉めて一ノ瀬家の玄関へ向かう。
(……あれ?そういえば何で私の家しってるんだろう……?)
―――ピンポーン
到着直前まで電話を繋いでいた為、チャイムが鳴り終わらないうちに両親が出てきた。
由梨はどこからどう見ても好印象な杏寿郎と、その男に優しく手を引かれている桜を見て嬉しそうな表情を浮かべる。
対して勇之は只々目を見開いていた。