第62章 エンカウント
「そ、そうです。でもさっき断ったから……、今はお友達です。」
杏「交際を申し込まれたのか。」
杏寿郎はそう言いながら再び優介に視線を送った。
優介は見るからに穏やかそうな顔付きの男だったが、その瞳は嫉妬に燃えている。
杏「…………もう遅い時間だ。俺が送ろう。立道くん、君も来てくれ。話がある。」
「えっ、あの、車なら私の父が……っ」
杏寿郎が戸惑う桜の手を引いて立ち去ろうとした為、優介は慌ててそれに付いて行った。
そして残された同級生達は一連の出来事に暫くざわついていたのだった。
杏「安心してくれ。先程言われていた通り俺はこの近くの高校の教師で身元が割れている。その上多くの友人が目撃していた。妙な事はしない。」
優「そう言われましても…、」
杏「ああ、桜は先に送る。その点も安心してもらって良い。」
「あ、ありがとうございます。ちょっと父に電話しますね。」
杏「うむ!勇と書いて "みち" と読む字を持つ父だな!!」
「そう…です………、」
桜は呆けつつ勇之に電話を掛けた。