第62章 エンカウント
男「今朝になって記憶が戻ったんだ!!君は成人の祝いの日に溺れたと言っていただろう!なので今日が溺れる日なのだと直感的に理解出来たのは良かったのだが、君の家の近くの川をいくら探しても見当たらなくてな!!なるべく怪しくないようにとスーツを着て杉並区の成人式にも向かったのだが出ていなかったようで家の前で待っていようかとも思ったのだがご近所の方に通報をされそうになっ、」
「あの…っ」
桜の声に男は漸く口を閉じて様子を見るように体を離した。
再び見えた燃える瞳を見て桜は胸を高鳴らせ、喉をこくりと鳴らす。
(やっぱり……この人だ…。)
そう思うと桜の顔はみるみる赤く染まっていった。
桜が男にときめく反応を初めて見た周りの友人達は口を開けて固まった。
そんな中、唯一燃えるような瞳の男だけが動く。
男は桜の頬に手を添えると心底幸せそうな表情を浮かべた。
男「顔が赤いぞ、桜。相変わらず酷く愛らしいな。」
それを聞くと桜は目を見開いて更に顔を赤くし、パッと自身の顔を手で覆った。
その様子を見ると男は楽しげに笑う。
しかし―――、
「あ、あの……、お名前をお伺いしてもいいでしょうか……。」
その言葉で男は纏う空気を変え、絶望の色を顔に浮かばせた。